第3回
新蕎麦の香りと独特の食感に満足
刈り取り、乾燥、脱穀、石臼を使った粉引き、蕎麦掻作りと、一通りの体験を終え、最終回の「蕎麦うち」体験にたどり着きました。
“たどり着く”という言葉がけして誇張ではなく、何気なく食べている蕎麦がこれほどの時間と手間がかかることを身をもって知ったことはとても貴重なことでした。
今回の「蕎麦うち体験」は都会のビルの一室での「蕎麦うち」とは違った次元の面白さが潜んでいます。
蕎麦うちは奥が深いといわれています。
今回は初心者を対象としているので「六四蕎麦」に挑戦しました。そば粉300g、中力粉200g、水220〜230g、用意する材料はこれだけで、あとはひたすら己の腕力と体力だけです。
材料がシンプルであるということは、裏返せばそれだけ作業は繊細さを求められるということです。
季節、空気の乾燥度に合わせて、粉に混ぜいれる水の分量を微妙に調節するのがポイントです。はじめに用意した水の3分の2をいれ、均一に粉に水分が廻るようにかき混ぜ、残りの水は練っていく手の感触を頼りに、数回に分けて注いではこねる、という作業を繰り返していきます。
粉が均一に水を吸収すると、そぼろ状に固まっていき、さらにそぼろ同士が互いにくっつきあって、小さな塊になってきます。
小さな塊をひとつの大きな塊にまとめ、体重をかけながら丹念に練り、粘り気を出します。
表面がつるつるになるまで練り込んだら、全体をお餅のように丸くまとめます。次にその丸餅状の蕎麦を手のひらで丸く平らにし、以後は麺棒を使い四角に整形して、最終的に1〜1,5ミリの厚さに伸ばします。
1辺が60センチ程度の正方形になったら、切りやすいように折りたたみ、打ち粉を表面に満遍なく振り、麺きり台に載せます。
打ち粉はそば粉そのものを使います。したがって「蕎麦湯」として飲んでしまえば、蕎麦の栄養分をとることができ、すべてを無駄なく使い切ってしまうというわけです。
大きくて重い蕎麦きり包丁をこま板にあて、包丁を傾けこま板をずらせば、ずらした幅が蕎麦の幅になります。太い蕎麦が好みなら、こま板のずらしを大きくし、細い蕎麦を好むならこま板のずらし幅を小さくします。包丁の重みを活かして蕎麦をリズミカルに切り、1人前分ずつ切り分けていきます。
切った蕎麦は乾燥しやすいので切ったそばから、ビニール袋などにいれて保冷しておきます。
一通りの作業を講師の先生に実演してもらい、参加者はみようみまねで自分のための「蕎麦うち」に取り掛かってもらいました。自分で打った蕎麦はそっくり家に持ってかえっていただき、家庭でじっくり味わっていただこうという趣向です。
最後に講師が打った蕎麦を、参加者全員が味わってみました。蕎麦の茹で方も教わり、ざるに盛り付け味わってみると、新蕎麦独特の香り、程よい硬さに全員感激しきりでした。
蕎麦湯も店では味わえないような、やわらかい味で蕎麦湯は何杯でもおかわり自由です。
今年から始まった蕎麦うち体験は準備の都合で、種まき体験を省きました。しかし来年は8月の種まきから、スタートさせる予定です。
来年の「蕎麦うち体験」イベントをご期待ください。