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トコトコ農園通信

2016年12月20日

パパイヤと味噌

理事 高橋 洋治

古い話で恐縮ですが、昨年の実験農場での体験談です。


一昨年の陸稲作りに続き何を作付けしようかと考えていた頃、当時私は茨城県某市に単身赴任しており、毎週末は所沢との往復を日課としていたそんな道すがら、常磐道のIC近くで見た畑に目が留まりました。そこには2mほどの低木に緑色の大きな果実がブドウの房のように実っていました。「パパイヤ!?」見た瞬間トコトコのTさんが言っていたことを思い出しました。茨城には「北限のパパイヤ」を栽培する農家さんがいて偶然にも赴任先の隣町にいるそうだ。「これが噂のパパイヤか」と、初めて見る光景にしばし見惚れてしまいました。


Tさんは以前から私たちの農園でもパパイヤを栽培したいと言っていましたが、野菜として馴染みの無いパパイヤに周囲の反応はいまひとつでした。私はタイ料理が好きなのでサラダでよく出てくる青パパイヤに馴染みは有りましたが、こうして実際に育っている姿を見て初めて自分も栽培に挑戦しようと思いました。


そこで実験農場のテーマをパパイヤに決め、数日後苗の予約と栽培方法を伺いに「北限のパパイヤ」農園を訪れました。主の農家さんは豊富な栄養分や酵素を含むパパイヤに魅かれ、独自の栽培方法や多数のレシピを開発し、地元の特産にしたいと熱く語られました。


パパイヤの栽培法は土作りに秘訣があり堆肥、米ぬか、油粕などを大量に投入し、これらの有機成分を分解する秘密の?菌を加えるものでした。さすがにこれだけの養分を吸収するから栄養豊富になるのだなと納得しました。


年が開け、いよいよ土作り開始。1月・3月と2回に分け、教えてもらった量の堆肥投入。トコトコで通常播く10倍以上の堆肥、加えて米ぬかを撒くと、畑の表面は黄色く覆い尽くされました。回りの人が見たら一体何をしているのか不思議に思ったことでしょう。


そして4月、地温も上がってきたので入手したばかりの苗を5株定植。水をたっぷりかけ保温のために透明キャップをかぶせ1ケ月ほど「そのまま放置」。

もらったメモを忠実に守って作業を行いました。しかし残念なことに、これでパパイヤ栽培の話は終わりです。なぜなら1ケ月後キャップを外すと苗は悲しくも枯れていたのです。


どうやら「そのまま放置」はそのまま受け取っては駄目だったようです。苗を植えてから雨がほとんど降らず土は乾燥しきっていました。水遣りしなければ枯れてしまうのも当然ですが、週一回しか作業できないこともあって「放置」で大丈夫と思っていた自分が甘かったようです。


済んだことは仕方が無いとして、投入した大量の堆肥をどうやって生かそうか? 何か実験的な作物は無いか? と早速次の作物を考えました。すでに6月で、種まきの端境期になり目ぼしい作物が無かったので、前年失敗した大豆作りをやることにしました。簡単にできそうな作物ですが、前回はコガネムシやカメムシに葉はボロボロ、実は吸い尽くされ全滅してしまいました。そのリベンジと収穫した大豆で自家製ミソを作ろうとプランを立て、早速種を播きました。


幸い6月以降は平年並みの降水量になり、無事発芽し順調に生育を始めました。虫除けネットは前年の失敗を踏まえ、収穫期まで付けたままにしようと考えていました。

7月には苗もかなり成長しましたが、見ると葉っぱがネットの中で過密状態になっていることに気がつきました。ネットを外すと葉は繁っているが、茎はヒョロヒョロで弱々しい見事なツルボケでした。

元来やせた土地に向いている作物なので、元肥がふんだんに入った土地で生育はどうなのか? これも実験のつもりでしたが、期待?を裏切らない結果となりました。このままでは肝心の花実を付けるのか心配になり、とりあえず苗を自立させるため根元に土寄せして様子を見ることにしました。


夏から秋にかけ何度か土寄せし、手をかけてあげると、いつしか小さな花が咲き鞘を付け始めました。鞘に実を抱き枝豆になり、秋に枝葉が枯れてくると大豆らしくなりました。風が吹くと微かにカラカラと鞘の中で豆が踊っているのが聞こえます。すでに鞘がはじけて地面に落ちている豆も有りました。


11月晴天の日ついに収穫。脱穀は鞘を棒でバンバン叩いて豆を取り出す原始的な方法で半日がかりの作業でした。出てきた豆はキズやシワがあって見栄えは良くないけど、なんとか形になったことにホッとしました。豆はひと冬乾燥させ、ミソの仕込みは翌年(つまり今年)の3月初旬、ギリギリ「寒仕込」のタイミングでトコトコ農園に道具を持ち込み作業をしました。


ミソは麹の酵素と乳酸菌や酵母の発酵が次々起きてできるもの。麹は相棒のMさんが準備してくれたので、熟成に必要な菌は農園の自然に漂っている連中に協力してもらい、トコトコ特産オンリーワンのミソにすることにしました。こうして仕込み作業も無事終わり、1年後の樽開きまで塩蓋をかけて眠っています。


2年間という短い期間でしたが、私にとって興味ある作物を好きな方法で栽培する「実験農場」は最高の“遊び場"でした。諸事情により来年は実験農場を閉鎖することになりましたが、いつの日か復活を目指してこれからも農園の活動に勤しみたいと思います。


早いもので今年も鍬収めの時期となりました。来年も楽しい農園ライフを送れることを祈って、皆様良いお年をお迎え下さい。


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2016年3月トコトコ仕込みのミソ 1年寝かせて出来栄えが楽しみです。
(塩蓋で表面が見えてませんが...)



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メール:support@ganbare-nougyoujin.org