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トコトコ農園通信

2015年5月20日

雪に覆われる大地 北海道の農業について(その一)

理事 神山 光路

11月中旬からから4月初旬までの約5か月、北の大地、北海道は積雪のためすっぽり隠れてしまいます。所沢で5年余り野菜つくりをしてきた経験からはおよそ想像がつかない厳しい自然環境です。

2014年3月に所沢から札幌市内に移住して、冬を初めて経験しましたが、札幌は道内でも比較的、積雪量も少なくかつ気温も暖かいほうです。しかしそれでも最低気温0度未満の冬日が12月から3月までの4か月間続きます。つまり降った雪は溶けずに根雪状態のまま春の遅い雪解けをじっと待っているのです。


では冬の間、農家の人たちはどのような暮らしをしているのでしょう。

人もうらやむ長期バカンスを楽しむ富農層の人たちがいる一方、大半の人たちは除雪作業のアルバイトや他県への出稼ぎで現金収入を得ています。

冬季の休業はなにも農業だけではありません。交通不便な郊外や観光地の飲食店なども同じです。


北海道の農業の特色は厳しい気候条件下で農業生産が制約されていますが、多くの農産物生産量がトップクラスにランクされています。これは欧米型に近い大規模農家が大型農機具を使用して効率性の高い農業経営をしているためです。ただし、北海道の圧倒的な広さ(北海道の面積は東北6県に新潟県を加えた広さ)という優位性を加味すれば他県との単純な生産量比較はできないでしょう。

また一口に北海道の農業といってもその広さのため地域により農産物は様々です。そこで北海道の農産物が全国のどこでどのように食品として形を変えているかを取り上げることで地域性を見てみましょう。


北海道新聞社2002年発行の「「北の食材」を参考に具体例を拾い出してみます。

2002年と一昔前の情報なので、現時点ではデータが違っている可能性は否定できませんが、おおざっぱな地域性は把握できると思います。

その前に天気に左右される農業との関連で北海道の天気予報で使われる7つに区分される各地方を簡単に説明します。北から時計回りに・・・


1. 宗谷地方(稚内からオホーツク沿岸地域)

2. 網走・北見・紋別地方(宗谷地方の南のオホーツク沿岸地域)

3. 釧路・根室・十勝地方(知床半島を含む)

4. 胆振(いぶり)・日高地方(室蘭・苫小牧・浦川の噴火湾沿岸一帯)

5. 渡島・桧山地方(函館・江差)

6. 石狩・空知・後志(しべし)地方(日本海沿岸地域で札幌を中心にした一帯)

7. 上川・留萌地方(内陸の旭川から日本海の留萌までの地域)


北海道は酪農が盛んですが、その中でも特に最北の稚内からオホーツク海沿いにかけての宗谷地方は広く平坦な土地の特色を生かした酪農がメインになっています。


水産物では根室地方の標津(しべつ・知床半島の付け根)のサクラマスが1950年代以降マスの漁獲量が激減した富山県の名産ます寿司に推定で5割から7割の割合で使われているようです。


北海道の中心に位置する十勝・帯広一帯は農業が最も盛んな地域です。

良質な小豆をはじめとする豆類や小麦の産地として有名ですが、その小豆や小麦を使ったお菓子つくりが盛んで、全国的なブランドに成長した「六花亭」、「柳月」など大小の菓子メーカーが集まっています。

また小豆以外の豆はフジッコの「おまめさん」として十勝産の豆が使用されています。

十勝地方の中札内産の大根は京都の漬物メーカー大手の「大安」に出荷されています。京都のお漬物は観光客に大人気で、通年生産を余儀なくされていますが、すべての材料が京都産でまかなうことができません。そのため大根の2割は中札内の契約農家から仕入れています。

また農産物ではありませんが、「馬刺し」で有名な熊本県の馬肉の半分は十勝・帯広一帯で飼育された農耕馬です。「ばんえい競馬」に競走馬として日の目を見る馬は全体の2割しかないそうで、残りは馬体重800キロの食用馬として熊本県などに売られていきます。


次に近年、高い評価を得ているお米を見てみましょう。

お米の主たる産地は札幌から旭川に延びる中央自動車道路沿線(石狩・空知一帯)が米どころで、江別(札幌郊外)・南空知のキララが大手冷凍食品企業ニチレイの冷凍焼きおにぎりやピラフに使用されています。

また上川地方の中心地、旭川の北の名寄産もち米は固まりにくく、その性質を活かしてあのふわっとした触感の伊勢「赤福」の原材料の9割を占めています。


北海道といえばすぐジャガイモを連想します。

ジャガイモを薄くスライスして油で揚げたおなじみのポテトチップスはスナック食文化の嚆矢として1975年カルビーが発売しました。同社製ポテトチップスの50%が観光地として有名な美瑛産(上川地方)のジャガイモが使われています。

またジャガイモから作られるでんぷんは岩手県盛岡市の「冷麺」に使われています。独特のこしを持った「冷麺」は岩手県産小麦と道産ジャガイモから作られるでんぷんを加え重曹と水で練りこんで作られます。


また気候温暖な胆振(いぶり)地方の伊達は洞爺湖の南、噴火湾沿いで北海道の湘南といわれています。伊達では主としてトマト、ブロッコリー、長ネギを中心に多種類の野菜が作られています。

札幌から車で1時間内の後志(しべし)一帯は羊蹄山を取り囲むように世界的に有名になったニセコなど観光地をかかえ観光農園が盛んな地域です。アスパラガス・ジャガイモ・関西の高級料亭に出荷されるユリ根などを生産しています。


このように北海道は農業、酪農、水産の一次産業が盛んなところで「食の王国」といわれますが、道産食材が全国的な知名度を持つ名産に広く使われています。


北海道の厳しい自然環境は農業生産にとってマイナス面だけ強調されますが、北海道ならではのプラス面も多々あります。次号は北海道特有のプラス面を考えてみる予定です。


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宗谷地方の道路を走っていると大小様々な牧場に出会う

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同左

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羊蹄山の麓に広がる観光農園



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