<<耕作放棄地とその予備軍を活用する法人・個人の事例>>
所沢の耕作放棄地は、182ha(平成22年農林業センサス(5年ごとに実施される国勢調査の農業版)による)あって、耕地としての統計値1,540haと登記上の地目1,750haの差にほぼ相当します。つまり、最大限活用すべき耕地は1,750haあるのです。
このうちで、高齢化や後継ぎがいない、あるいは経営上の理由から農業をやめたい、縮小したい、という農業者の耕作放棄地と耕作放棄してしまいそうな畑はいずれ500haにも達すると考えられるのです。
このままで放っておくと、市街化調整区域の畑であっても市全体の保全プランが無いために、無計画に資材置き場や、コンテナ物置レンタル業、物流倉庫、駐車場等々に変わってしまい、所沢の“みどりの資産”はどんどん失われ景観は悪くなる一方です。
この項では、農業法人や個人農業者の耕地活用例をいくつか紹介します。これらの例には、高齢化した農家による耕作地の売買・貸借も含みます。もう、農業をやめたいという農家が、信頼できる農業者あるいは法人に耕作地保全を任せるようになってきているということです。
<<関谷農園>>
所沢で最大の耕地(約9ha)を持つ下富の関谷農園は、株式会社化し、新規就農の研修生を毎年受け入れています。前シリーズで所沢市民大学での関谷農園フィールドレポートを掲載しましたが、ここでは研修生が独立の際に自営地が持てるよう、近隣農家の耕作放棄見込み畑を積極的に引き受け保全しています。
江戸時代から続く当農園は、現在60代で元気な8代目社長と“自然農法"にチャレンジしている9代目の息子さんが営農しています。8代目社長は、従来農法ではあるものの、自ら積極的にマーケットニーズを把握するために市場を走り回って、販売をJAに頼らず順調な農業経営を行っています。
この農園の作物は、“食の駅”等でよく見かけますが、市民大学のフィールドワークで訪れた際に分けていただいたトウモロコシは、格別においしかったことが忘れられません。
<<船津倉庫>>
蕎麦店「みよしそばの里」を経営する船津倉庫(三芳町)は、10年以上前から、農家の高齢化で維持が難しくなった茶畑(所沢市所沢新町)1.4haを借り受け、定年者を再雇用して蕎麦を転作栽培しています。所沢の神米金(かめがね)地区や狭山市、ふじみ野市など後継者不足の農家30軒から約26haにも及ぶ畑を借り受け、年2回、夏蕎麦と秋蕎麦を栽培していて業界でも「埼玉のみよしそば」としてブランドを確立してるようです。
実績を積んで信用を築いた企業には農家からも耕作放棄地保全期待が集まっています。
蕎麦の花が一面に咲き、一帯は名所となりつつあります。蕎麦だけでなく菜の花、チューリップ、向日葵、コスモスなど季節の花を咲かせ、三芳町商工会町づくり協議会が地元農家と共同で「菜の花活動」を始め地元活性化に取り組んでいます。
<<OimoCafe>>
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「みよしそばの里」の関越自動車道を挟んで西側、通称「芋街道」の“上富"交差点北東角の農家の中に“OimoCafe”があります。大変人気のカフェで予約なしには入れない状況が続いています。
耕地活用例ではありませんが、グリーンツーリズムの成功例といってよいでしょう。妻と一緒にその人気の秘密を考えてみました。
1. 農家の中のカフェで田舎の雰囲気が味わえる
2. 新鮮な自家製野菜いっぱいの洒落たランチが美味しい
3. なんといってもサツマイモをアレンジしたスイーツがたまらない
4. サツマイモの壺焼きが見られる
5. スタッフが男女とも若くて溌剌としている
この他、筆者が考えるに近所に競争相手がいない、ということでしょうか。残念ながら所沢市にはまだこんなカフェはないですね。是非、行ってみてください。ただし、9割は女性客です。
その他にも耕地活用事例はいくつかありますが、次回にまた報告させていただきます。
(次回へ続く)
ご興味、ご関心をお持ちの方は、何なりとお気軽にお問い合わせください。
メール:support@ganbare-nougyoujin.org