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農のある暮らし

2011年12月5日 更新

第3章 新たな出会いについて

田舎暮らし志向


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団塊世代を対象にした各種アンケートによれば人気があるのが田舎暮らしです。

退職後田舎に移住して第二の人生を送りたいという願望はなぜか団塊世代に多くみられるようです。

団塊世代が高校生から大学生までの多感な頃、日本経済は高度成長期にあって特に首都東京は社会インフラが急速に整備され、新幹線、地下鉄、高速道路の交通網が整い、下水道普及率も目覚しいほど伸びました。都内はいたるところでビル建設ラッシュに沸き、1年もすると景観ががらっと変わる時代でした。

目覚しい経済発展に誇らしいものを感じる一方で、都内を流れる隅田川や多摩川は生活排水と工場排水で流れはよどみ異臭を放ち日に日に汚れがひどくなりました。

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高度経済成長の負のつけが公害として表面化し、便利で豊かな都市生活の裏で悲しいほど、そして驚くほどの速さで自然環境が損なわれてきました。

おりしも世界は期を同じくしてベトナム反戦運動と大学紛争の嵐が吹き荒れ、ヒッピーが町にあふれる時代でした。自然回帰志向の高まり、経済合理性への疑問など将来への漠然とした不安を感覚的に感じとっていたのでしょう。

モヤモヤとした不安と苛立ちを理論的に言葉で表現できなかったため、学生運動は実にもろくそしてあっけなく終焉してしまいました。あまりにも情緒的であり激情的な運動だったことは団塊世代の一人として認めざるを得ません。

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そして大学生から社会に出た途端、二次にわたるオイルショックを経験し、団塊世代は高度経済成長から安定成長へ、そして低成長へとゆっくりとした下り坂のなかで大半の時間をサラリーマンとして生きてきたのです。

ある時代をどの年代ですごしたかが世代特性を形成する要因となると考えられますが、以下は団塊世代について時代と年代の関係を箇条書きに書き出してみました。


第一に戦後の目覚しい発展ぶりを幼い目を通して見てきたこと、

第二に高度経済成長期を多感な年代で経験したこと、

第三に社会人になってまもなく日本経済が安定成長から低成長時代へと移り変わるときにサラリーマンとして長い期間働いてきたこと、

第四にバブル崩壊、銀行・大企業の倒産、グローバリズム、リーマンショックなど日本経済が急激な変貌を遂げるときにサラリーマン生活の終盤を迎えたこと

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以上四点が団塊世代の世代特性としてあげられる特徴です。

団塊世代は戦後日本社会の軌跡をなぞるように生きてきた世代です。いい局面も悪い局面も常に先頭を走る波に乗ってきた世代で、時代という波の最高点に乗るサーファーのような世代です。うまく波にのれば最高の気分を味わい、バランスを崩せばたちまち海中に放り出され、苦い海水をいやというほど飲み込み、地獄のような苦しみを味わってきた世代ではないでしょうか。

ではこうした時代背景の中で生きてきた団塊世代は人としてどのような考え方、行動パターンをとってきたのでしょうか。

1950年の早生まれで自身が団塊世代の最後に属する残間恵理子による団塊世代の特徴を引用してみましょう。


1、 自分は若いと思っている

2、 「恋」の話が大好き

3、 「文化」志向が強い パック旅行がきらい

4、 習い事への欲求

5、 「変化」を好む新し物好き 田舎暮らし

6、 人の目を気にする  みっともないが口癖

7、 怨念が残る団塊の女たち

8、 お金のことを口にするのははしたないと教育された世代教育と健康の自己投資に金をかける


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確かに高校の同級生の女性たちは性の違いによる社会的差別を恨み、男社会に対する不平不満をことあるごとにぶちまけてきました。

この7番目を除けば総じて自分に当てはまることばかりで、見透かされているような気持ちになってしまいます。

さて「変化」を好み新し物好きな団塊世代はまた自然志向が強く、田舎暮らしに憧憬とも言えるほど関心を示してきました。特に退職が間近に迫ってくると田舎暮らし願望は現実味を帯びてきました。

団塊世代を対象にした行政、企業が行った各種アンケート調査では田舎暮らしが常に人気上位にあげられています。

田舎移住希望者に対し田舎の不動産物件を長年扱ってきた専門家によれば1960年代から現在に至るまで過去に三次にわたる田舎移住ブームが起きてきたそうです。しかし、ブームと実際に田舎移住を実現したケースには大きなギャップがありそうな感じがします。

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そもそも田舎移住者に関する信頼できる統計データを見たことがありません。

私の知るかぎり総務省の住民基本台帳人口移動報告「転入者および転入超過数の推移」が田舎移住を類推するうえで使えるデータではないかと思います。

このデータは昭和57年(1982年)から平成22年(2010年)までの都道府県別の転出入者数を集計したデータです。

これによれば年代別地域別の大きな特徴が読み取れます。


<北海道・東北地域の状況>

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100万都市仙台を抱える宮城県を除き昭和57年(1982年)から平成11年(1999年)までは地域全体で転出が上回ってきました。ただし福島県が平成4年(1992年)から4年連続して転入が上回るという例外を記録しています。

しかし平成12年(2000年)を境に宮城県も北海道、東北の他県の仲間入りをして、平成22年(2010年)まで北海道・東北地域は総て転出が転入を上回ってきました。

<首都圏の状況>

首都東京の状況は昭和57年(1982年)から平成8年(1996年)までの15年間は昭和60年(1985年)を除いて転出超過が続いてきましたが平成9年(1997年)から平成22年(2010年)まで一貫して転入超過になっています。

首都圏3県の神奈川・千葉・埼玉県のうち千葉・埼玉両県は昭和57年から平成22年までの28年間転入超過を記録しています。例外が神奈川県で平成13年(2001年)から平成22年まで4000人から7000人の間で転出超過になっています。

<関西圏の状況>

関西の中心である大阪は東京一極集中の影響で昭和57年から平成22年まで、唯一平成7年(1995年)の阪神淡路大震災の影響を例外にして転出超過傾向を続けてきています。大阪の地盤沈下を憂いた大阪の住民は今回の大阪府長選挙、大阪市長選挙で大阪維新の会に投票したのかもしれません。京都、兵庫も入れた関西圏全体が大きな流れでは転出超過傾向が現在も続いています。

<九州圏の状況>

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九州圏の特徴は平成2年(1990年)以降福岡県が転入超過傾向を保ち、沖縄県以外はほぼ全県にわたり転出超過傾向になっています。沖縄の魅力はその独特な文化、南国リゾート観光のイメージ、離島ブームなどに魅せられた都市生活者が移住し平成5年(1993年)から平成22年まで転入超過基調になっています。


年代別地域別の大きな特徴を大まかにあげてみましたが、視点を少し変えて各地域の大都市別の人口移動データで見てみると次のような傾向が読み取れます。

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北海道全体では昭和57年から平成22年まで唯一平成7年(1995年)を例外として転出超過になっていますが、札幌市は逆に例外なく同期間、転入超過になっています。

また福岡県福岡市は札幌と同じく昭和57年から平成22年まで一貫して転入超過になっています。

福岡市のお隣の北九州市は全く正反対に転出超過という具合に、その地域を代表する大都市に郡部や隣接都市から転入してくる傾向がはっきりと読み取れます。


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このように総務省の住民基本台帳人口移動報告を見る限りにおいて、都市から田舎への人口大移動とマスコミや観光・旅行業界が謳うほどの田舎移住ブームは起きなかったと思われます。

田舎移住ブームと実際に田舎移住を実現したケースとは大きなギャップがあると思われます。このあたりの事情については次号であらためて考えてみることにします。



※本レポート中の写真と本文の内容は直接関係はございません。