2007年10月6日
第4回 稲刈り <2>
最初から機械を使ったほうが楽だった?
田植えのときには慣れるまでの最初の一時間は、遅々として作業がすすまなかったが、後半のスピードは見違えるように速くなった。ところが稲刈りは最初から終わりまで作業ペースは上がらず、2時間で全量の4割程度しか刈りすすまなかった。
その大きな理由は人数分用意した鎌が稲刈り専用のものでなく、容易に刈れなかったことが大きい。稲刈り専用の鎌には内側に溝が掘ってあり、のこぎりで茎を切り取るような細工がなされている。刃全体がゆるいカーブを描き、刈り取りやすい工夫が施してある。一方、用意した鎌は雑草を刈るためのもので、のこぎりのような溝も、カーブもついておらず、硬くてボリュームのある稲を刈るにはちょっとした工夫と力を必要とした。
稲を左手でしっかりつかみ、自分の体と反対方向へ稲を倒し、鎌の先端で最初の切り込みを入れるようにしながら、刃全体を使ってやや下から斜め上に一気に手前に引く。
茎のボリュームが多すぎるときは、刃先で茎の右端をすこし刈り、あとは今言った要領で一気に鎌を手前に引くと刈り取ることができる。
特に腕力の弱い女性にとって、この作業はつらいものがある。そこで刈り取りしたもち米を15束ひとまとめにして、稲わらで縛る作業をお願いした。
水を抜いて幾日か経過した田んぼは、すこし湿った程度で虫にとっては格好の住処になっていた。無農薬の田んぼには幾種もの虫たちが生息している。そこへ突然、稲の住処を鎌で切り取られ、驚いた虫たちが一斉に飛び出してくる。それは徒競走のピストルで一斉にスタートを切って、飛び出していく子供たちの様子に似ている。
なれない力仕事に作業のスピードは目に見えて落ちてくる。このままのペースでは作業終了より日暮れが先にやってきそうだ。参加者も手を休めて畦に座り込む人もでてきた。2時間かかってもまだ全体の4割刈り取ったかどうか、指導していただいている茂木さんの的確な判断で、近くの有機農家からコンバインを借りてくることになった。
やってきた手押し型のコンバインは燃料キャップをなくしたままの古い機械だったが、性能はなんら問題ない。
結局、このコンバインはわずか15分ぐらいで残りのもち米をきれいに刈り取ってしまった。しかも自動的に結束までやってしまう。機械の威力をまざまざと見せつけられた瞬間である。
参加者はただただ腕組みして感心するばかり。自分の手で稲を刈ることを楽しみにしていたはずなのに「最初から機械を使ったほうが楽だった」とはなんとも本末転倒というか実も蓋もない話だが、これが正直な感想だ。
刈り取り、結束したもち米は天日干しにするが、今回は時間の関係でこの作業は農家の方々にお任せすることになった。結束したもち米の束は形を整えて、花瓶に活けておけばススキよりも見栄えがしてきれいだという。そこで土産として参加者に一束づつ記念にもって帰ってもらい、第4回目の「米つくり体験」を終了した。
心地よい汗に一週間ぶりの青空の組み合わせは実りの秋を実感できた一日だった。
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