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野菜あれこれ


 今年の野菜作りは年内27日に最後の収穫をして終了です。

 ここ2〜3週間は秋冬野菜の収穫以外、これといった作業はなく、農具などを仕舞っておく小屋の整理整頓と掃除が主たる仕事でした。

 今年一年を振り返ってみると、作った野菜、根菜の種類は昨年とほぼ同じで30種類あまり。

 そこで今回は日ごろあまり気にかけていない野菜、根菜のルーツを調べてみることにしました。

 ユーラシア大陸の東端に位置する日本は野菜、根菜も文化と同じように中国や韓国を通して大半が諸外国から伝えられてきました。

 伝えられた時期もさまざまで、古いところは弥生時代から、新しいところは明治時代までと、その時代差はかなり大きいといわれています。


 まず古い順に並べてみると・・・・

弥生時代 カブ
奈良時代 ナス、ネギ
平安時代 レタス
江戸時代初期 ジャガイモ、ホウレンソウ、ニンジン(東洋系)
江戸時代中期 トマト
江戸時代末期 ニンジン(西洋系)、キャベツ
明治時代 ブロッコリー、ピーマン、タマネギ
時代不明 キュウリ、コマツナ、ダイコン

 時代不明のキュウリ、コマツナ、ダイコンはあまりにも古くて、人の記憶から好け落ちてしまったのでしょうか。弥生時代につたえられたカブは「日本書紀」に出てくるといいます。したがって「日本書紀」が編纂された720年ごろには新しい野菜という認識があったのでしょうか。であればキュウリ、コマツナ、ダイコンはカブよりもさらに古くから親しまれていた作物ということになるのでしょうか。

 意外だったのはレタス。当時は「チシャ」と呼ばれていたそうで、どのような食べ方、調理の仕方をしていたのでしょう。平安時代の貴族たちが「野菜サラダ」を食べている様子を想像すると、ちょっぴり愉しくなります。


 コマツナはカブの仲間のようで、葉や茎がカブに比べて大きく育ったのではないかといわれています。信州の「野沢菜」も同じように京野菜の天王寺蕪を野沢の名刹健命寺の住職が持ち帰り、気候・風土の違いから根よりも葉・茎が大きく育って、現在のような「野沢菜」になったと伝えられています。

 ニンジンはその形状などから東洋系と西洋系に分かれ、日本に伝えられた時期も100年以上違っています。なにやら大乗仏教と小乗仏教の分派を連想させるようで面白い。


 見方を変えて今度はどこから伝来したかを整理すと・・・

インド・アフガニスタン
レタス、キュウリ、ニンジン、ナス、タマネギ、ホウレンソウ、カブ
地中海沿岸地方 ブロッコリー、キャベツ、カブ
南アメリカ ジャガイモ、トマト
北アメリカ ピーマン
中国西部・シベリア ネギ
不明 ダイコン、コマツナ

 多いのは圧倒的にインド、アフガニスタンですが、インドといっても東部、西部、ヒマラヤ山脈とかなり広い範囲をさしています。またホウレンソウがアフガニスタンのお隣のイランといわれており、西アジアも含むさらに広い地域をさしていますので、お断りしておきます。同じようにレタスもインド、中国、地中海地域と広範囲にわたり、一応便宜的に分類してあります。

 よく知られているのがアンデス山脈のペルーやチリが原産のジャガイモ、トマトではないでしょうか。


 不明に入れたダイコンは世界各地に原生種が確認されている、もっともポピュラーなひとつです。日本のダイコンは伝たえられてから100種類以上品種が増えたようですが、現在は西日本の青首ダイコンが9割を占め主流になっています。ジャガイモに生産量1位を奪われましたが、長い間ダイコンが生産量1位を続けていました。


 早計かもしれませんが、日本の野菜などの原産は京都を中心にした関西圏といわれていますが、インド、アフガンを含む西アジア全体に原種が集まっているのは、世界文明の発祥がこの地域一帯であることを証明しているような気がします。


 目の前のダイコンを引き抜きながら、世界文明のことを考えている自分の姿が滑稽になってきたところで、今年の「野菜作り体験記」は終了です。


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