冬野菜の収穫期到来
数ある冬野菜のなかで、いの一番にその代表として上げたいのが「白菜」。
9月17日に種まきした今年の白菜は、天候の具合で早々と結球し始め、外から触ってみても葉がしっかり硬く巻いている様子が、両の手の感触からわかる。
今年は一人、3個あての収穫になりそうだ。
12月3日、今年はじめの白菜を収穫することになった。大人でも一抱えほどの大きなやつを収穫する。両手で両側をしっかり押さえ、左右どちらか一方に白菜を傾けると、簡単にとることができる。
鎌で白菜の根きりをすると、ピューッと根元から水がほとばしり出た。みずみずしいやつだ。近頃のスーパーでは、丸々1個の白菜を売るところは少ない。4分の1から、中には8分の1くらいまでにカットされたものが売られている。
今回とった白菜は外側の葉を何枚か取り除いても、1個の重さは3Kgをゆうに超えていた。
野菜つくりをしていると、うれしい悲鳴ではあるけれど、ひとつの種類が同時期に、どっと取れてしまい、時にその扱いに頭を悩ませるということが常におきる。
大概は、ご近所に配って廻るのだが、収穫量が半端でないので、毎週同じ野菜を配ることになる。すると配られた近所の方に「またっ!」と思われてしまっては元も子もない。
親切心がかえって仇になり、それが元で互いにギクシャクしたなんてことは、絶対に避けたい。
となると、やはりできるだけ自家消費して、余った分を少量、おすそ分けするというのが理想となる。腹八分といって、もらう側も「もう少し欲しいのに」と思わせるのが近所円満の秘訣である。
そんなわけで、収穫も楽しくて大事だがそれをどう調理するのかが収穫同様に重要になると、私は考えている。
昨年と同じように、まず丸々1個を漬物にする事にした。昨年スーパーで買い求めた小ぶりの漬物容器をベランダの片隅から引っ張り出し、容器をきれいに洗うことから始める。次に、硬そうな外側の葉を5〜6枚はずし、水洗いする。
白菜の根元から3分の1くらいまで包丁を入れ、後は手で引き裂くようにすると、きれいに2等分できる。それをさらに同じように切り分け、最終的に8等分した。普通は4等分で十分だが、我が家の容器が小さいこと、1回に食べられる量が少ないことなどの理由から8等分にしている。白菜の漬物を食べるのは我が家では私一人なので1食分が4分の1だと、食べきれないためである。
新聞紙に等分した白菜を並べ日に干す。こうすると余計な水分が取れ、それに比例して白菜の甘さが出てくるためである。約半日ほど干せば十分である。
次に用意するのは昆布、赤唐辛子(お好みで適当な量)、ゆず2分の1個、そして塩。
塩の量は少しきっちり計ることにした。白菜の重量(今回の白菜は3,2kg)の3%を目安にしたので約100g用意した。
この頃の日は短く4時を過ぎると暗く、そして寒くなるので3時半には容器に白菜を漬け込むことにした。
まず、容器の底に多めの塩を均等にふりかけ、その上に切り口を上にして互い違いに白菜を並べる。容器が小さいので1段が2株しか入らない。第1段目の上に用意したゆず、赤唐辛子(今回は唐辛子を糸状にきったものを使用)、昆布を振りまき、その上から塩を適当にふりかけ、以下、同じ手順で4段目まで積み上げる。最後の4段目の表面には少し多めに塩を振るようにする。
あとは、容器にごみが入らないように袋をかぶせ、その上から少し重ための石をおいて、終了。数日もすると石の重みで白菜から水分が出てくるので、少し小さめの石に取り替えてさらに2〜3日漬け込む。
昆布のエキスとゆずの香り、塩と赤唐辛子の辛味が絶妙に絡み合い、おいしい白菜漬けができる。
私の子供の頃は、5人家族で大きめの木製樽に漬け込んでいたように記憶している。
昭和20年代後半から30年代にかけては、戦前よりも食糧事情が悪く、食べものの価格が異常に高かった。1ヶ月の米代でサラーマンだった父親の1ヶ月分の給料が吹っ飛んだこともある、と母から聞いていたので、あまりいいものを食べていた記憶がない。
白菜漬けには実は余りいい思い出はない。朝食は決まって白菜と味噌汁だった。白菜の葉を海苔に見立てて、ご飯を巻いて海苔巻きのようにして食べなさい、という母の言葉に反発を覚えたことを今でもしっかり覚えている。
しかし時はたち、いまではあれほど反発した白菜漬の出来上がりをわくわくしながら待ち望んでいるのだから、世の中も自分も変わった。