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中国に依存せざるをえない日本の食


 北京五輪を目前に発覚した「毒入り冷凍餃子」問題が五輪後も引き続き中国当局によって、捜査が進められている最中に、今度はメラミン入りの粉ミルクによる乳幼児の健康被害事件が持ち上がった。

 「毒入り冷凍餃子」はいまだ真相が解明されていないが、なにやら愉快犯的な事件性を連想させる。その後、粉ミルクのトップメーカーが生乳の増量工作のためにメラミンを混入したという、とんでもない事件が発覚した。

 メラミン入りの粉ミルクは当初、日本国内での直接的な被害は少ないと考えられたが、さまざまな加工食品にメラミン入りの粉ミルクが使われ入ることが徐々に明らかになりつつある。一連の問題で中国の食への信頼性はなお一層失われてしまった。


 中国における食品加工会社の品質管理体制については伝え聞くところによれば、あまりよい話しは聞こえてこない。一般的に地方からの出稼ぎ労働者は2〜3年で会社を辞めてしまうため、社員の安全教育が徹底できにくいという事情がある。

 また「毒入り餃子」の天洋食品は国有系企業で、関 満博一橋大学教授の著書「現場学者 中国を行く」によればこの国有系企業は古い体質から抜けきれず、品質管理が徹底できておらず、なにかと問題が多いと指摘している。

 同氏はまた40歳以上の特に国有系企業の経営者には古いタイプが多く、注意して付き合うよう、日本企業にアドバイスしている。


 日本人の食の60%は外国に依存している。特に近年、中国に依存する割合は年々高くなっている。中国製食品を安全を理由にすべてボイコットしたら、それこそ、スーパーの棚は明日から即座に隙間だらけになってしまうのが現実である。残念ながら中国はじめ諸外国からの輸入なくしてもはや日本の食は成り立たないといっていい。


 日本の食糧自給率が大きく低下した理由は言うまでもなく、グローバル化という世界の潮流に大きな影響をうけてきた。水が低きに流れ出るように同じ品なら、価格が安いものに人々はひきつけられる。日本の農作物が世界より割高であれば、安いものに置き換えられるという大きな流れは誰にも止められない。

 この世界的な潮流のもとで日本の農業政策は立ちすくみ、結果的に無為無策のままいたずらに時間だけを浪費してしまった。


 落ちるところまで落ちた食の自給率をアップさせることは容易ならざることである。

 生半可な取り組みでは、数パーセントすら改善することが難しい。それ相応の時間と地道な努力を継続して初めて改善の道筋が見えてくるという程度であろう。


 食の安全を脅かす問題は日本においても頻繁に起きている。先の事故米事件から過去にさかのぼっても、枚挙にいとまがないほど次から次へと起こっている。中国の輸入食品ばかりを問題視することは、事の本質を見逃すことになる。国内産だから安全、とは言い切れない現実があり、偽装が横行していることからも、価格が高い国内産だから安全とはけしていえないのである。


 ましてや国内に比べ監視の目が届きにくい海外からの輸入は安全を確保しにくいという側面がある。しかも中国産は突出して安全性に問題が生じており、日本がとりうる有効な対処法はどこに求めればいいのだろうか。

 ユニクロに代表される「開発輸入」は食の分野でも盛んに行われている。日本仕様による完璧な一貫生産管理体制下で高いクオリティーを保つことができる「開発輸入」は原材料の生産から、加工、調理、製品輸出まで厳しいチェック体制が敷かれている。

 しかし今回、そんな日本企業の努力を無為にしてしまった毒入り餃子事件がおきてしまった。いくらマニュアルを整えても、それを理解し、確実・誠実にこなす作業員が存在しない限り、安全が担保されないことが明らかになった。

 さらに経営者自身が品質管理体制の重要性を正しく認識して、従業員教育をどこまで真剣に徹底して取り組んでいるかという疑問は残った。関教授の40歳以上の経営者には注意したほうがよい、という指摘はこのあたりのことを警告している。


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午前中のみ開いている一般市民向けの市場

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同上、種類も豊富で値段も安い

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同上

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中堅スーパーの外観

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同上の看板

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同上、品揃えは豊富