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タマネギの旬は春と秋?


 タマネギは、北海道では春に植え付けたものを秋に、それ以外の地域では秋に植え付けたものを初夏に収穫するのが一般的です。通常は収穫後約1か月間、日陰などで風をあてて乾かしますが、収穫のはしりとなる新タマネギはすぐ出荷するため、独特の甘さと香りに加え、みずみずしさと柔らかさがあります。

 タマネギの旬は春と秋といわれていますが、品種改良の技術革新や栽培方法の多様化によって日本では一年中食べることができます。

 農林水産省の平成18年度の資料によると、タマネギは作付面積23,600ha、収穫量1,158,000トン、出荷量1,014,000トンが国内でつくられています。秋から春先に出荷される北海道産がそのうちの約48%を占め、次いで春先から夏に出回る佐賀・兵庫・愛知・長崎の各県産が続きます。しかし、日本では加工や外食など業務用としての利用が多く、安価な輸入タマネギとの競合もあって、年々生産量が減少する傾向にあります。そのおもな輸入先は、中国・ニュージーランド・アメリカ合衆国(オレゴン州)・台湾などです。

 ちなみに、FAO(国連食糧農業機関)の2003年のデータで世界のタマネギの生産量を見てみると、中国が世界生産量の約46%を占めて第1位です。次いで、インド、アメリカ合衆国、トルコ、イラン、パキスタンと続き、日本は第8位です。


 ユリ科ネギ属のタマネギ、ニラ、長ネギ、ニンニクなどには、特有の辛みと刺激臭があります。それは、硫化アリル(ジアリル・ジスルフィド)と呼ばれる化合物に由来し、刺激臭が強い作物ほど腐敗や病害虫などの被害が少なくなります。タマネギを切ると涙が出るのは、空気にふれると硫化アリルの仲間のアリルプロピオンという催涙性物質が発生し、粘膜を刺激するからです。

 硫化アリルは、胃の消化液の分泌を促進し、食欲増進効果があります。また、制菌・殺菌作用があり、ネギ属の植物には健胃・整腸・発汗・強壮など薬用にも多く使われます。漢方や民間療法では、「消化を助け、発汗を促進し、炎症を抑えるのに効果がある」とされています。また、便秘や虫下しにも効くといわれています。

 肉や魚の下ごしらえにネギ属の植物を利用するのも、焼鳥屋で串にタマネギやネギを肉と交互に刺しているのも、この硫化アリルが生臭みの主成分であるアミンと反応して生臭みを緩和するためです。タマネギを加熱したときの甘さは、硫化アリルが熱でプロピルメルカプタンという物質に変性したからと考えられていますが、プロピルメルカプタン自体には「低カロリーの割に砂糖の約50倍もの甘さを持つ」「まったく甘くない」という両極論があり、いまのところ結論は定かではありません。

 そのほか、硫化アリルはビタミンB1と結合してアリチアミンとなり、疲労回復、食欲不振に奏功するビタミンB1の吸収・保持をよくします。また、硫化アリルは動脈硬化の原因となる血栓やコレステロールの代謝を促進し、血栓ができにくくする「血液サラサラ」作用もあります。さらに近年では、ガンに効能があるという報告もされています。


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