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日本で栽培され始めたのは明治時代


 タマネギはユリ科ネギ属の多年草で、ネギ、リーキ、ニンニク、ニラ、アサツキ、ラッキョウなどと同じ仲間です。亜熱帯から温帯にかけて広く栽培されていますが、鱗茎が寒さに遭遇しないと生長をはじめないため、冷涼で乾燥した気候を好みます。

 鱗茎とは、ふだん食しているタマネギの球体部分で、これは葉の下の葉鞘と呼ばれるところが生長するごとに厚みを増し、重なり合って丸く太ったものです。1枚ずつはがすと魚の鱗(うろこ)のようになるので、鱗茎と呼ばれます。つまり、わたしたちはタマネギの葉の一部分を食べているわけです。

 多くのうろこ状の葉の集合体ということで、一体を表すラテン語の「union(ユニオン)」から、タマネギの英語名「onion(オニオン)」が派生しました。


 タマネギの原産地は西アジアのイラン近辺と考えられていますが、野生種が見つかっていないため、中央アジアから地中海沿岸にかけて諸説あります。にんじんやホウレンソウなど西アジア原産の野菜は、栽培化されるとまもなくヨーロッパと中国に同時に伝播し、それぞれの風土に適して改良されていく過程をたどるのが一般的です。しかしタマネギは、なぜか中国では定着せず、代わりに長ネギが普及しました。そのため、日本に伝わったのは幕末で、栽培されはじめたのは明治時代に北海道開拓使がアメリカ産タマネギを導入してからでした。

 一方、西方に伝えられたタマネギは、古くから強壮に奏功する作物として栽培されていました。紀元前3000年ごろの古代エジプトでは、第一王朝時代の墓の壁画にタマネギの絵が描かれ、ピラミッド建設の労働者の食料としてニンニクなどとともに配給されていました。タマネギが彼らの給料の支払いにも使われたという説が生まれるほど、重労働に耐えるための貴重な強壮剤として活用されていたわけです。また、紀元前1000年ごろの古代ギリシアや、紀元前500年ごろの古代ローマでもタマネギ栽培の記録があり、『旧約聖書』や『千夜一夜物語』にもタマネギを食べたり、精力剤にしたりする話が散見します。しかし、ヨーロッパ一帯に栽培が普及したのは16世紀になってからだといわれています。


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