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ルーツは古代中国の「醤(ジャン)」


 味噌は、しょうゆと並ぶ日本を代表する調味料です。肉食中心の欧米では、イノシン酸などの旨み成分が十分に確保できますが、野菜と魚中心の日本の食事では、どうしても旨み成分が不足しがちで、古来味噌などに含まれるアミノ酸がこれを補ってきました。味噌のルーツは、しょうゆと同じく古代中国に伝わる「醤(ジャン/ひしお)」であるといわれています。そもそも醤とは、獣肉や魚肉などをたたき潰して、雑穀の麹と塩と酒をまぜて壺に漬け込んだもので、これは現在の秋田地方に伝わる「しょっつる」や東南アジアの魚醤などによく似ていたのではないかと考えられています。やがて、大豆や雑穀などを発酵させた醤が中国西方でつくられるようになり、紀元前2世紀ごろに鼓(クキ)と呼ばれる大豆に塩を組み合わせた発酵食品が文献に表れます。この植物性たんぱく質の発酵食品が味噌の原形ではないかと考えられ、奈良時代に高麗人によって日本に伝わったといわれています。高麗から伝えられたときの日本での呼称は「高麗醤(こまびしお)」で、高麗人たちはこれを「密祖(みそ)」と呼んでいたそうです。現在でも、中国には辣醤(ラージャン)、豆板醤(トウバンジャン)、甜麺醤(テンメンジャン)、暇醤(シヤージャン)、豆鼓(トウシ)、韓国にはコチュジャン(苦椒醤)、日本には味噌、しょうゆ、ベトナムにはニョクマム、タイにはナムプラーなどがあって、中国に端を発する発酵調味料ロードが浅見でき、醤が伝播の過程でそれぞれの民族の味覚に融合して食生活を支えてきたといえます。


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