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輸入関税が最も高い農産物?


 1980年代半ばのコンニャクイモの関税率は、コメの778%を上回り、全品目中最高の1706%でした。現在でも輸入関税の最も高い農産物の地位は揺るぎなく、コメの2倍強の990%を誇り、コンニャクイモの輸入価格はじつに11倍に跳ね上がります。

 その理由は、2004年9月21日付けの日本経済新聞の記事「平成の開国 タブーの壁 漂う政官民」によれば、群馬県がコンニャク生産の日本一で、地元輩出の福田赳夫・中曾根康弘・小渕恵三という3人の歴代首相(当時)によって手厚く保護されてきたからだそうです。なお、現在の福田康夫総理大臣も群馬県出身になります。

 たしかにコンニャクの栽培地は中山間地が多く、大規模化によるコスト削減が難しいのが現状です。そこに急激な市場開放が実行されれば、安価な中国産に太刀打ちができない可能性が非常に高いといわれています。農水省の試算では、コンニャクイモの国境措置を撤廃すると、生産業の90%・加工業の100%が減少し、産業として完全に崩壊するとの見解を示しています。

 現在のこんにゃくの日本国内自給率は86%と比較的高めですが、今後の輸入状況によっては大きく落ち込む可能性のある食材でもあるのです。


 戦時中、コンニャクは兵器にも利用されました。第二次世界大戦末期には、風船爆弾製造用の糊としてコンニャク粉が全国から集められたのです。

 1944年秋〜1945年春にかけて、和紙をコンニャク糊で張り合わせた直径約10mの風船に約200kgの焼夷弾を積んだ風船爆弾が、旧陸軍によって3か所の基地(福島県勿来・茨城県大津・千葉県一宮)から約9,000個放球されました。偏西風に乗って時速200kmで飛び、太平洋を2〜3日で越えたそうです。

 「ふ号作戦」と名づけられたこの作戦で、アメリカ本土に約280個が落ち、オレゴン州では6人が犠牲になったそうです。同地には「アメリカ大陸で死者を出した唯一の場所」と銘打った追悼碑が残されています。

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