特集

  • 前のページへ
  • 001
  • 次のページへ

輸入飼料で飼育した牛は国内産か?


 アメリカ牛や中国野菜問題をきっかけに日本の消費者は、食品の産地表示に神経を尖らせるようになった。

 確信犯的な産地偽装は論外だが、韓国・中国産のアサリを輸入して、日本国内の海で2〜3日留め置いたアサリを国内産と表示して堂々と販売されている。このように産地の定義はあやふやになっている。


 同様に国内産と表示されている「牛肉」はどうなのだろう。

 アメリカ、ニュージーランド産の牛肉と国内産の違いは「輸入」という事実をもって明確な線引きが可能なのか。

 というのも日本の牛も豚も、そして鶏もその餌は外国からの輸入に頼っている。豚の「配合飼料」の90%は外国から輸入されている。つまり豚の餌の国内自給率はたったの10%にすぎない。牛の餌である干草さえも輸入に頼っている。

 さらに物価の優等生といわれる鶏卵ですら輸入飼料に頼っているため、カロリーベース自給率で計算すると鶏卵の自給率はたったの9%という信じられない数値だ。


 グローバルな世界において、どこの国の餌を使おうと、国内基準のもとでしっかり安全に飼育されていれば問題ないという考え方もある。しかし、輸入飼料に依存する現在の畜産業界の飼育法にはいくつかの疑問と問題を抱えている。


1、飼育コストの40〜60%は輸入飼料代で占められている。

2、反芻動物である牛に配合飼料を大量に与え、不健康な牛を育てている

3、柔便の牛糞処理による新たな公害発生と糞尿処理コストの増大をもたらしている

4、地球温暖化などの影響で輸入飼料価格が上昇し、肉の価格が高騰する

5、エタノール燃料の影響で飼料用とうもろこしの安定的な供給が難しくなる

6、生産効率のために各種ホルモン、抗生物質に頼る飼育法で、今後人体への影響が懸念される

 はたして国内産だからといって牛・豚・鶏の肉は本当に安全で信頼に足るものなのだろうか?



輸入飼料と食料自給率の関係


 食料自給率の計算には私たち人間が直接口にする食糧だけではなく、牛・豚・鳥の餌である穀物なども含まれている。日本の食料自給率(カロリーベース)はついに40%を割り込み、先進国のなかで自給率の低さは群を抜いているが、家畜の穀物飼料輸入が自給率を下げる要因の一つになっている。

 なぜ日本国内で飼料用作物を自給できないのか、おのずと疑問がわく。

 日本国内で飼料用の小麦、大麦、裸麦、とうもろこし等が気候的条件により生産できないのだろうか。あるいは飼料用穀物類を作るための農地が不足しているのだろうか。

 いずれの答えも「NO」だ。

 寒冷な土地を好む麦類は日本の温暖な気候条件に確かにむいていないが、作れないということはない。ひと昔まえは盛んに小麦を米の裏作として秋から、翌春にかけて作っていた。

 また農地が不足しているかといえば、現在はその逆である。農水省の基本データによれば耕作放棄により遊休農地面積は平成17年度において埼玉県一県の面積を上回っている。

 食料自給率の低下に苦慮している裏で生産調整によりお米農家が減り、輸入野菜に押されて耕作放棄をする野菜農家が増えている。

 このあい矛盾する状況が続いているのが日本の食料・農業を取りまく現実である。

記事関連の写真

休耕畑に牧草を植え、放牧された黒毛和牛のメス

記事関連の写真

試験的に飼料用稲を食べさせたしゃぶしゃぶ用肉牛のパック