知られざる米どころ「多古」
温暖な黒潮と東京湾に囲まれた千葉県は気候温暖で、しかも高い山もない。
大消費地、東京に接し野菜の生産は全国一である。野菜のみならず、落花生、梨の生産も全国一である。千葉は全国有数の農業が盛んな県である。
今回訪れた道の駅は北総台地に位置する「道の駅 多古 あじさい館」である。
「道の駅 多古 あじさい館」は東関東自動車道の成田もしくは大栄インターチェンジを降りて一般道を30分ほど走った296号線沿いにある。都内から車で1時間半の距離である。
地図で多古町の位置を確かめてみると、成田国際空港は目と鼻の先で、九十九里海岸は直線距離で測ってみるとすぐそこにある。
多古町の名の由来を「道の駅 多古 あじさい館」の平野店長に聞いてみた。
大昔、この地は沼地でいたるところに胡(みずうみ)があった。胡の多いところ、すなわち「多胡」が「多古町」になった。
多古町は米作りに適した肥沃な土地で、平成2年には「日本の米作り百選」に選ばれた米どころである。
道の駅の建物裏手に九十九里海岸へ流れ込む「栗山川」があり、川べりには北へ約1キロメートにわたってあじさいが植えられ、毎年6月に町の大きな行事としてあじさい祭りが行われてきた。平成12年9月にオープンした「道の駅 多古」はこのあじさい祭りにちなんで「あじさい館」と名づけた。
国道296号線を銚子方面にむかう途中の田園風景に、モダンで瀟洒なコンクリート作りの建物が見えてくる。細長い船のような特徴ある建物が「道の駅 多古 あじさい館」だ。
ウイークデーでも来客数が800〜1000人という人気の道の駅だが、その割に駐車場は小ぶりである。第2駐車場の建設も視野に入れているという。
客層でまず目につくのが定年後の夫婦で、隣町の「道の駅 くりもと」と旧八日市場町(現ソウサ市)の直売所の3箇所を買い物コースで回るのが楽しみな人達。それと男性の一人客も多いそうだ。男一人が近所のスーパーで買い物することに抵抗感があっても、「道の駅」では反対に買い物を楽しんでいるという。
館内をはいるとレジ近くに「太巻き」や弁当の類が並んだ棚が目に飛び込む。
酢飯にのりの代わりに玉子焼きで巻いた「太巻き」はこの地域の名物料理の一つである。祝い事など人が集まる席には必ず供される、もてなし料理の定番だそうだ。玉子の黄色、中の具は各種漬物で、色とりどりの断面は花の模様などがきれいに浮き出るように巻いてある。
ほんのりとした酢飯の酸味と玉子の甘み、そして漬物の塩味のバランスがとてもよい。近所の農家の主婦達が思い思いに作り、売っている。味はその家々で異なり、家庭の味がそれぞれ味わえるのがうれしい。このあたりがスーパーの品揃えと決定的に違い、「道の駅」のよさが出ていると思う。
この「太巻き」以外、弁当が幾種類も並んでいるが、大半が午後の早い時間に売切れてしまうそうだ。多古米を使ったご飯ものが人気商品になっている。