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酒の種類だけ酢の種類がある


 酢はアジアではおもに米などの穀物から、ヨーロッパでは果実からなど、世界各地で地域の農産物を原料につくられ、4000種類もあるといわれています。「酒のあるところ、かならず酢あり」という言葉もありますが、どんな酒でも発酵させれば酢となります。つまり、酒の種類だけ酢の種類がありうるわけです。だから、その国で愛飲されている酒から連想すれば、たいてい一般的に使用されている酢がわかります。日本では日本酒からつくる「米酢」です。フランスなどではワインからつくる「ワインビネガー」で、ワインと同様、赤と白の2種類があり、赤ならコクのあるどっしりとした味、白なら軽くあっさりとした味が楽しめます。イギリスやドイツではビールからつくる「モルトビネガー(麦芽酢)」で、ビールに似た独特の味と香りがあり、ピクルスやマヨネーズに適しています。りんごの生産が盛んなアメリカ合衆国ではりんご酒からつくるりんご酢が愛用され、「第2代大統領ジョン・アダムズは毎朝かならずジョッキ1杯のりんご酢ドリンクを飲んでいた」という逸話が残っています。また、北イタリアのモデナ地方に伝わる伝統的な「バルサミコ酢」は、ワインと甘みの強い白ブドウ果汁を煮詰め、長期にわたって木の樽で熟成させたものです。ウィスキーなどと同様、熟成期間の長いものほど珍重され、なかには80年以上熟成したバルサミコ酢もあるそうです。なお「バルサミコ」とは「芳香性の」という意味で、香りが高く、まろやかな甘みがあります。ほかにもスペイン・ヘレス地方特産のシェリー酒からつくった「シェリービネガー」など、有名どころだけでも枚挙にいとまがありません。そのほか海外には、はちみつやココナッツ、バナナなどからつくった酢などもあります。

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