特集

  • 前のページへ
  • 003
  • 次のページへ

何故かほっとする山村風景


 関越自動車道、東京・練馬のインターチェンジから125Km、車で1時間半も走れば沼田インターチェンジに到着する。

 沼田インターチェンジ手前には片品川が削りだした深い渓谷が横切っている。利根川支流の片品川の両岸は河岸段丘になっていて、川面はのぞきこむようにしなければ見えないくらい深い。

 今回の目的地、道の駅「川場田園プラザ」のある群馬県利根郡川場村はこの河岸段丘から山に向かって続くなだらかな南斜面に位置する。川場村は人口4000人強の小さな村で、道の駅「川場田園プラザ」はその村の中心部にある。


 なだらかな斜面の行き着く先は標高2158メートルの武尊山(ほたかさん)である。

 武尊山の名は「日本武尊」(やまとたけるのみこと)に由来する。「日本武尊」は景行天皇の双子の子供(弟)で、大和朝廷に抗う勢力を討つために父の命を受けて全国を飛び回った悲劇の皇子である。「日本書紀」によれば南の熊襲、北の蝦夷を討ち果たし、信濃、越後を征服する途中に上野(こうずけ)に立ち寄ったことが記されている。武尊山は全国各地に伝えられる「日本武尊伝説」により命名された。


 川場村は村内にスキー場(川場スキー場)もあるくらいだからそれなりの積雪量もあり冬は寒い。しかし、南麓に位置しているためか、年間の平均気温が12度のすごしやすい土地柄である。特に昨今の地球温暖化の影響もあってか、冬の寒さもだいぶ和らいできている。村内を流れる主要な四つの川は雪解け水を集めて水量も豊富でかつ清涼である。


 南麓に沿って続く川場村はさえぎるものも少なく、大きな山懐に抱かれる景観はどこからでもとらえることができる。雄大かつなんともいえない心和む風景である。農業を主要産業とするこのあたりは田畑とさまざまな果樹に囲まれ、山を借景にした、のどかで見慣れた農村の原風景を保っている。何故かほっとするのは周囲が山に囲まれていても、けして閉鎖感や圧迫感がなく、むしろ山によって外から守られている安堵感と開放感を感じさせるのだろう。


 川場村の観光資源はこの自然そのものである。ここを訪れる観光客の多くは突出した名所、旧跡があるわけでもないのになんとなく、繰り返し訪れる。

 「川場田園プラザ」の能登駅長さんの言葉を借りれば観光客は「無目的」に訪れるリピーターが圧倒的に多いという。

 確かにそういわれれば思いあたるところは多い。筆者もこの近辺を何度となく訪れているが、はじめに来たのが隣町の白沢町営「望郷の湯」だった。「望郷の湯」と「川場田園プラザ」は車で10分とかからない近さである。これに味をしめて家族、友人、会社の同僚を次々に誘って、ときに「吹割の滝」から「片品高原」まで足を伸ばし、ドライブを楽しんだ。

 都内から2時間もあれば、この有り余る自然を満喫できるところが何よりもうれしい。山あり、渓流あり、田んぼあり、さらに温泉とスキー場までそろっている。

記事関連の写真

大きな山懐に抱かれる景観は村内いたるところどこから見ることができる。

記事関連の写真

畑と果樹と山々。

記事関連の写真

「川場田園プラザ」から片品方面に行くと「吹割の滝」が見られる。