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奥が深い野菜作り


 野菜作りはこの時期、ちょうど端境期で、収穫は相変わらずオクラだけです。

 今夏は連日の異常な猛暑で、オクラのような暑さを好む植物にとってはよいのかもしれません。しかし、植物全般にとっては環境の大きな変動をもろに受けて、生育時期に明らかな影響が出始めています。

 たとえば春播野菜は20日ほど前倒しに種播きの時期が早まってきています。逆に秋播野菜は20日ほど種播きの時期を遅らせなければなりません。

 北極の氷が溶け出し、アルプスの氷河が後退し、シベリアの永久凍土も溶け出していると聞きます。野菜作りをしていても、温暖化の影響を肌で感じます。


 わがベランダ農業は前号で触れたとおり、秋に向けてほうれん草の種を播き、ようやく小さな芽が出始めました。ほうれん草の種類は「日本ほうれん草」で、説明書きにある種まき時期は、関東地方で8月から9月とあります。しかしこの異常な暑さを考えるともう少し時期をずらしたほうがよかったかと、多少後悔しています。写真のように全面に種を播きましたが、芽だしはまばらです。今後生育状況が悪いときはもう一度播きなおすくらいに考えています。


 また6月半ばに種まきをして、ちょうど2週間後に芽が出たパセリは、何故か途中で全滅しました。ちょうどこの時期は雨が多く、日照時間も短かったので再度、種を播きました。今度は日がよくあたる場所にプランターを置いてみましたが、さてどうなることやら。前回同様、芽は元気に出揃いましたが、ここ2〜3週間で生育の見極めがつくでしょう。


 野菜と水やりの関係で面白いのは、夏野菜を代表する「トマト」と「きゅうり」の違いです。

 「トマト」は乾燥に強く、ほとんど水を与えません。市販のトマトの苗もできるだけ弱々しそうな苗を選び、根が水を求めて丈夫に張るように仕向けます。一方、「きゅうり」は逆に水分を欲しがる野菜です。「きゅうり」の出来がいいときは「トマト」は収穫が期待できないなど、人は思いのままに自然をコントロールできません。

 だから自然相手の農業は面白いのでしょう。野菜作りはよく子育てにたとえられますが、ある一定の年齢に達した大人たちには自分の人生と重なりあう部分が多いことに気づかされます。


 野菜作りは奥が深い。


>> 茂木清一 <<
1948年埼玉県生まれ。埼玉県美里町で農業を営む。元JA技術指導員。
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「日本ほうれん草」の種

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暑さのせいか芽だしもまばらなほうれん草。

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二度目の挑戦、パセリ。