素材

  • 前のページへ
  • 004
  • 次のページへ

日本各地で生産されてきた“しょうゆ”


 古くから日本各地で生産されてきたしょうゆは、秋田県には「しょっつる」という魚醤があり、西日本には煮物や吸い物に使用するうすくちがあり、九州には関東のものよりも甘味が深いこいくちがあるなど、それぞれの地域の食文化や醸造の歴史などによって、さまざまな個性を持っています。しょうゆの種類は、日本農林規格(JAS)によって、「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5つに分類されています。「こいくち(濃口)」は全国のしょうゆ消費量の約82%を占める最も一般的なしょうゆで、大豆と小麦を同量使用して醸造します。塩味のほかに、深い旨味・まろやかな甘味・さわやかな酸味・味をひきしめる苦味を併せ持っていて、調理用・卓上用のどちらにも幅広く使える万能調味料です。全国で生産されていますが、千葉県の銚子や野田、香川県の小豆島が有名です。「うすくち(淡口)」は関西で生まれた色の淡いしょうゆで、全生産量の約15%を占めています。大豆と小麦を同量使用して醸造しますが、発酵と熟成をゆるやかにさせるために食塩をこいくちより約1割多く使用し、熟成期間は短めで、仕上げの段階で甘酒を加えることもあります。ちなみに、塩分は通常こいくちが約16%、うすくちが約18%です。素材の持ち味を生かすため、色や香りを抑えてあり、煮物や吸い物など素材の色や風味を生かして仕上げる調理に使われます。兵庫県たつの地方の醤油ですが、関西圏を中心に全国に普及してきています。全生産量の1.8%を占める「たまり(溜り)」は、おもに中部・九州地方でつくられ、原料は大豆が中心で小麦の使用はほんのわずかです。とろみと濃厚な旨味、独特な香りが特徴で、古くから「刺身たまり」と呼ばれるように、寿司・刺身用に使われるほか、照り焼きなどの調理用や、佃煮・せんべいなどの加工用にも使われます。全生産量の0.7%を占める「さいしこみ(再仕込み)」は、山口県柳井地方を中心に山陰から九州地方にかけての特産しょうゆで、大豆と小麦を同量使用して、モロミをつくる段階で塩水の代わりに生揚げしょうゆを使います。しょうゆを2度醸造するような形態をとるため「再仕込み」と呼ばれています。色・味・香りともに濃厚で、別名「甘露しょうゆ」ともいわれ、刺身・寿司・冷奴などに使われています。全生産量の0.8%を占める「しろ(白)」は、愛知県碧南地方で生まれた、うすくちよりもさらに淡い琥珀色のしょうゆです。原料は小麦が中心で大豆はほんのわずかです。味は淡泊ながら甘味が強く、独特の香りがあります。色の薄さと香りを生かした吸い物や、茶わん蒸しなどの料理のほか、せんべいや漬物などにも使用されます。

記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真