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欧米では調味料?


 トマトは、穀物類とブドウを除くと、世界でもっとも栽培されている作物です。日本での野菜における消費量は第6位ですが、イタリアやフランスなどではトマトが野菜消費量ナンバーワンを誇ります。日本でほぼ生食されているトマトは、欧米ではピクルスで食べるほか、日本人が味噌や醤油を使うようにトマトを調味料としてピザ、スパゲッティ、ブイヤベースなどに愛用します。これはトマトに多く含まれるグルタミン酸が調味料の役目をするためで、日本ではその代わりに昆布が主として使われてきました。トマトは重用されてきたヨーロッパ各国でさまざまな愛称があり、イギリスやフランスでは「愛のりんご」、イタリアでは「黄金のりんご」、ドイツでは「天国のりんご」と表現されています。一方、日本では「蕃茄(ばんか)」「唐がき」「赤なす」「六月がき」「さんごじゅなすび」などという別称があります。トマトは栄養的にもすぐれた野菜として広く料理に用いられ、世界でもっとも愛されている野菜のひとつです。

原産地はアンデス高原


 ナス科の一年生植物であるトマトの原産地は、南米ペルーを中心としたアンデス高原で、ほおずきのような小さな実をつける野生種が10世紀ごろメキシコに伝わり、食用として栽培されはじめたといわれています。メキシコのアステカ人は、トマトやほおずきのことを「トマトゥル(膨らむ果実)」と呼んでおり、それがトマトの語源となりました。16世紀に南米大陸に押し寄せたスペイン人がトマトを持ち帰りますが、色やにおい、また当時の「ナス科の植物には毒がある」という迷信から食用としては敬遠され、当初は観賞用として栽培されました。17世紀にイタリアの貧困層が食用としてトマトに目をつけ、品種改良やパスタなどの料理研究を重ねた結果、18世紀になってようやく作物としてヨーロッパに広まったと考えられています。北アメリカには18世紀に伝わりましたが、やはり食用としての需要がなく、19世紀に入ってようやく、病気に強く、果実のかたいトマトの品種が生まれ、本格的に栽培されるようになりました。

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