特集

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 今日、輸入野菜は日本国民の食生活において無視できない存在となっています。それは、1980年代中頃以降、輸入量が急増し、しかも今日においても一定量が輸入されているからです。そこで、本シリーズでは近年、「食の安全」が話題となっていることも踏まえ、2002年に顕在化した輸入野菜の残留農薬問題について2回に分けてお話したいと思います。この問題は、周知のように、輸入してきた野菜に国の定めた基準値を超える農薬が残留しており、それを長期にわたって食べ続けた場合、健康に害を与える可能性があるというものです。今回は、当問題の中でも特に注目を集めた中国産冷凍野菜を対象に、その位置と同問題発生の原因について取り上げます。

 輸入野菜は形態の違いによって生鮮野菜と加工野菜の2つに大別されます。農畜産業振興機構「VINAS」より2003年の輸入数量をみると、生鮮野菜の割合は36.6%、加工野菜の割合は63.4%となっており、わが国においては加工野菜の輸入量が多い状況にあります。通常、加工野菜は、冷凍野菜、塩蔵野菜、乾燥野菜、酢調整野菜、トマト加工品、その他調整野菜に分類されます。このうち、最も大きな割合を占めているのは冷凍野菜であり、同年において4 4.7%にも上っています。

 輸入冷凍野菜の動向を輸入先国別にみると、近年、特に中国からの輸入量が際立って増加しています。例えば、冷凍野菜総輸入量は1990年から2000年にかけて35万tから77万tへと42万t増加していますが、この期間内に中国からの野菜輸入量は4万tから32万tへと28万t増加しており、なんと、総輸入量の増加分の65%以上を占めました。しかも、注目すべきは、冷凍野菜は加工品であり、生産時の歩留を考慮して生鮮換算すると、この2倍以上の数量が輸入されていることに等しいことです。こうしたことを踏まえると、中国産冷凍野菜はわが国に輸入される野菜の中でも重要な位置にあるといえます。このような特徴を有していることから、中国産冷凍野菜を中心とした輸入野菜の残留農薬問題はテレビや新聞といったマスメディアも大々的に取りあげました。

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